999A06:棚卸の意味

999:パソコン以外について

棚卸の目的を説明したいと思います。棚卸は決算に関係する重要な作業です。私も入社時は、ただ在庫の個数を数えるのが棚卸だと思っておりましたが、棚卸の真の意味を説明できれば幸いです。

まず、PLから

棚卸は、資産に関係することなので、PLには関係しないと思っている人が多いと思いますが、まず、PLについて、ここで、おさらいしておくことが重要です。PLは、ある一定期間の売上利益の状況を示す財務諸表の内の一つです。

ここで、確認してもらいたいのは、法人税等は、税引前当期純利益によって計算され、税引前当期純利益が高ければ、税金は多く払う必要があり、税引前当期純利益が少なければ、税金も少なく計算されます。

もう一つは、売上総利益は、売上から売上原価を引いたものということです。

売上総利益が高ければ、その下の営業利益、経常利益、税引前当期純利益までが高くなることをここで確認してください。

売上原価について

売上原価は、以下の図のようになっております。右の表の、売上高=売上原価+売上総利益 は、すでに上で確認した通りです。

売上原価の部分を見てみましょう。少し、算数的な説明をすると、上記、左の表は、

前期末製品在庫 + 仕入原価 + 製造原価 = 売上原価 + 期末製品在庫

これを、売上原価について解くと

前期末製品在庫 + 仕入原価 + 製造原価 ー 期末製品在庫 = 売上原価

となります。ここで、期末製品在庫 とは、棚卸で実際に現物確認できたものを、資産として評価したものです。資産が正しく評価されなければ、BS(貸借対照表)が正しくなく、正しい決算とは言えなくなるので、棚卸は間違えなく行わなければならないものだと言えます。

しかし、BSだけではない。売上総利益が変化

しかし、BSだけでなく、上記のように、期末製品在庫の金額が、棚卸の間違えで、過小や過大に評価してしまうと、上記の式から、過小ならば、売上原価が大きくなるし、過大ならば、売上原価が小さくなってしまいます。売上高は変わらないので、売上原価が変化すると売上総利益が変化します。

すると、初めにお話しした、売上総利益が誤った数字であれば、それは、営業利益、経常利益と影響を与え、税引前当期純利益の数字を誤ったものにしてしまいます。税金は、税引前当期純利益に関わってくるので、納める税金も変化してきてしまいます。

PLは、一定期間の売上と利益を示すもの

PLは、一定期間の状況を示すものなので、3月31日の決算日は、とても重要です。棚卸も3月31日の入出庫作業が終わった期末の数字をカウントします。3月31日の製品在庫数量をもって期末の製品在庫高を計算することになります。

もしも、すでに売り物にならないものが1億円分、3月31日にあったとします。このまま棚卸を行えば、製品在庫高は、1億円多く計上されます。

話を簡単にするために、上記の式を具体的な数字を入れて検証してみましょう。

前期末製品在庫(1億円) + 仕入原価(1億円) + 製造原価(2億円) = 

売上原価(x) + 期末製品在庫(1億円)

の場合、売上原価(x)は、3億円となります。

もしも、売り物にならない製品1億円分を期末製品在庫に加算してしまうと期末製品在庫(2億円)となります。

この場合、売上原価(x)は、2億円となります。

え、売上原価が1億円下がるということは、売上総利益が1億円あがって、利益が出て良いこと!と思うと大きな間違えです。

初めに話したように、売上総利益が上がると、それ以後の利益全部があがり、納める税金も多くなります。この場合には、1億円の約23%(2300万円)のキャッシュを税金として支払わなければなりません。また、1億円分の売れないものなので、期を超えてから、破棄するとなると、ゴミに対して、2300万円の税金を払い、破棄費用をかけて破棄するといった状況になってしまいます。

会社は、利益が出ていれば潰れないのではありません。キャッシュが回らないと潰れてしまうのです。また、キャッシュがあれば、そのキャッシュを使ってその分だけ大きな取引ができますが、キャッシュが回らなければ大きな取引もできません。どれだけ売れ筋商品があろうが、利益商品があろうが、ついていけるキャッシュがもとになっております。

話を戻します。

売れない商品は、決算前に整理しておく必要があるのです。整理とは、捨てることです。

売れない商品を、わざと抱え込んで、利益を出す会社もあるかもしれませんが、それは企業としては末期で、決算を良く見せて、銀行から借り入れをできるようにするためのあがきで粉飾決算と思われてしまします。

通常でキャッシュが回っており、利益が出ている会社なら、売れない商品を決算をまたいで保管しているのは、管理がされていない状況であると思います。

脱税

ただ、棚卸後の決算処理において、不良在庫ということで、整理していない商品分の棚卸除外については、脱税と言われても言い訳が立ちにくいので、棚卸前に必ず整理することが必要であると思います。

脱税となると、支払うべき税金に多大な利息を含めて支払う必要があるため、決して脱税はするべきではありません。追徴課税の内の重加算税というらしく、1.4倍ものキャッシュを支払う必要性が出てきます。

結論

以上で、何が言いたかったというと、棚卸の真の目的は「不要なものがあれば、その前に整理する」ことであり、棚卸時に整理されていないものがあれば、会社に迷惑をかけたということで、責任者は処罰の対象であると認識しなければならないということでした。

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